賃貸借中における修繕費の負担と特約

こんにちは【百年投資家】です。今回は賃貸借継続中の修繕費の負担について書いて行きたいと思います。この知識があるか無いかで有利な契約書になるか不利な契約書になるかが決まります。

不利な契約書を作成してしまうと賃貸後クレームが発生した時に大きな損をしてしまい、安い家賃で貸した物件の場合は最悪です。民法606条を中心とした修繕費についての知識は大家業を行う上で必須の知識となっています。

修繕費についての条文

契約書に入れたい特約修繕費についての条文としては民法の606条、608条に記載があります。修繕費についての条文は下記のようになっており、契約書に特約として記載しない場合は賃貸人(大家)側ですべての修繕費を負担することになります。

修繕義務の条文
  • 606条1項 賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。
  • 606条2項 賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない
  • 608条1項 賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。

修繕費についての特約

契約書

修繕費については任意規程のため特約によって別の取り決めを交わすことが出来ます。特約によって貸主の修繕義務が免除されている場合、基本的に借主は貸主に修繕費を負担するよう求めることは出来ません。

任意規定とは

法令の規定のうちで,当事者がそれに反する意思表示をすれば適用されない規定の事。強行規定に対するもので,当事者の意思にまかせても第三者の利害関係や公の秩序,善良の風俗に影響のないような事項に関する規定,当事者の意思を解釈,補充するために設けられた規定は一般に任意規定である。

ただ、全ての修繕費(必要費)を借主負担とすることは出来ないとされています。判例・通説は、修繕費をその規模・程度及び費用の面から大修繕小修繕に分け、小修繕については特約により賃借人負担とすることを認めるが、大修繕については特約によっても賃借人負担とすることはできないとしてきました。

例えば、雨漏りの様な大修繕は特約があったとしても大家側の負担となる可能性が高いです(しかし、賃料額に照らし、不相当に過大な費用を要する場合は、修繕義務がないとされています)。

修繕が必要ない場合

特約が無い場合でも大家側は必ず修繕を行わなければならない訳ではありません。借り主の使用にさしつかえない程度のものは修繕の必要はありません。

例えば、畳の日焼けや壁の汚れ、建て付けが悪い等は居住という使用の目的に差し支えがある訳ではないので大家側に修繕義務はありません。

賃貸借契約と修繕まとめ

判例や各種契約書を見てみると小修繕は借主負担、大修繕は貸主負担となっている場合が多いです。ただ、この場合でも契約締結の経緯、賃貸借契約の目的、建物の種類、構造、家賃、慣習などその他一切の事情を総合勘案した上でその趣旨を判断すべきであるというのが判例となっており、修繕義務については一概に言い切れないのも事実です。

そのため、後々トラブルにならないためにも修繕の範囲を可能な限り具体的に記載した方がいいです。また、消費者契約法の観点から一方的に借主に不利な特約は無効となる可能性がありますので特約を定める場合「近隣に比べ家賃が安いため材料費3000円以内で可能な小修繕は借主の負担とする」など一方的に借主が不利でないことを記載した方がいいです。今回の記事が不動産投資や賃貸借契約書作成の参考になりましたら幸いです。