新築アパート経営と築古物件投資の利回り・IRR・時給を比較

こんにちは「百年投資家」です。今回は新築アパート経営と築古物件投資のIRR(内部収益率)や時給(時間対効果)を比較していきたいと思います。

IRRは投資全体のリターンを示す指標としてよく利用され、一般的に築年数が古く、キャピタルロス(売却損)が出ない物件で高くなる傾向があります。一方、投資の時給(時間に対するリターン)の尺度で投資を分析するとIRRが高くなる投資よりも小さな労働投入で長期間保有できる新築アパートなどへの投資のほうが時給が高くなります。

利回りは実質利回り、NOI利回り、表面利回りなど様々な定義があり、管理会計・ファイナンスに属する学問のため同一の言葉だとしても同じ計算式でないケースが存在します。

この記事ではIRRの年間キャッシュフローはNOIと定義し、税引き前の値を使っています(ローン返済額を加味したADSで計算しても良いのですが、売却まで含めた場合、NOIで計算しても殆ど差異が生じないのでNOIで計算します)。

また、キャピタルゲイン、キャピタル・ロスの計算のもととなる金額は簿価(帳簿上の価格)ではなく、取得価格(初期投資額)を基準にしています。

新築アパート投資のIRRと時給

新築アパート投資

新築アパート投資の購入から売却までのキャッシュフローを図式化すると上記のようになるケースがほとんどです。

IRRの計算

売却までを含めた投資全体での利回り(IRR)を比較すると一般的にキャピタルロス(売却損)が出る新築物件投資ではIRR(内部収益率)が低くなる傾向があります。

上のエクセルの表では初期投資額1000万円、運営時の年間キャッシュフロー80万円(利回り8%)、6年目の売却価格800万円で計算しています。

6年目以降は毎年50万円ずつ売却価格が下落し10年目では600万円の売却価格(10年目の年間キャッシュフローは600万円+80万円=680万円)と仮定してIRR計算表を作成しました(画像をクリックすると大きくなります)。

収益総額

するとIRRの年間推移は上記のように右肩下がりとなります。税引き前のIRR(内部収益率)を投資の基準として判断した場合、6年目で売却した方が投資リターンが高くなるということとなります。

一方、収益総額で見てみると話が変わってきます。6年目以降は毎年50万円物件価格が寝下がる前提で計算していますが年間の家賃によるキャッシュインフローが80万円あることから保有すれば保有するほど、収益総額が上昇することとなります。

投資の時給

また、投資の時給という観点で見てみると上記のように6年間運営では時給2.8万円ですが10年間運営することで時給が3.3万円まで上昇することがわかります。

新築アパート投資

時給の数字は6年間運営で投入時間100時間、その後は1年増えるごとに5時間投入時間が増え、10年運営で120時間の労働を投入したと仮定しています。

もちろん全て、仮定の上で数字を算出していますがある程度妥当性のある数字だと思います。新築アパート経営ではIRRは5%程度とあまり高くはありませんが、時給換算すると高い投資対効果が期待でき、一般的なサラリーマンや士業、勤務医などと比べても収益性が高いと言えます。

築古アパート投資のIRRと時給

築古物件投資のIRR

上記は築古物件(アパート、一戸建て、区分マンションなど)へ投資した場合の一般的なIRRと収益総額の推移を示したものです。

土地値以下(土地値-解体費用)で物件を購入していると仮定しキャピタル・ロスは100万円としています(地方だと「土地の固定資産税評価額−建物解体費用」で購入できればキャピタルロスが発生する確率は低くなりますが仲介手数料、不動産取得税、登録免許税などの費用がかかる不動産投資ではキャピタル・ロスが発生する前提で収支を計算した方が確実です)。

築古物件投資

すると上記のような推移となりIRR、収益総額は年々上昇し、一見すると新築アパートに比べると投資対効果が高いように思えます。

投資の時給

しかし、一般的に築古物件では労働投入をかなり行わないと物件を再生することはできませんし、運営中のトラブルも多いです。今回のケースでは新築アパートに比べ4倍の400時間労働を投入した計算で時給を算出し、6年目以降、労働投入量が50時間増える前提で計算しています。

すると6年目での時給は1.85万円、10年目時点でも2.15万円程度の時給となっており、新築アパート投資に比べるとIRR(利回り)、収益総額は優っていますが時給は劣っているという結果となります(税金を加味した、税引き後キャッシュフローで計算すると10年以上の保有が期待できる新築物件への投資の方がリターンが大きいケースが多いです。税金については「課税事業者で投資物件購入時の消費税の計算と節税」などをご参照ください)。

投資の収支計算まとめ

いかがだったでしょうか?このように基準を変えることで優位な投資方法というものは変わってきます。新築投資が絶対に良い、築古投資が絶対に良いということは無く、あくまでもある基準で相対比較し優劣を比べるしかありません。

ただ、一点言える事としては一般的にサラリーマンの時給は数千円程度となっており、サラリーマンの時給に比べると不動産投資の時給の方が遥かに高くなっています。

また、高給取りと呼ばれる士業や勤務医の時給に比べても不動産投資の方が収益性が高いことが多いでしょう!今回の記事が不動産投資やアパート経営の参考になりましたら幸いです。